ブロアモーター分解・修理
エアコンとヒーターが使えない
ブロアモーターは、エアコンやヒーターによって温度調整された空気を室内に送り込むための電動ファンです。
ブロアモーターが故障すると、空気を送り込むことが出来なくなるため、車内温度の調整が出来なくなります。
ブロアモーターが故障しても車の走行には支障は無く、また、車検項目にも記載されていないので車検で不合格になることはありませんが、エアコンが使えなくなるため、必然的に交換・修理することになります。
故障前には送風口から「ガリガリ」と異音がする症状が出ていましたが、ある日、動かなくなってしまいました。
本来ならば、Assy交換になりますが、その前に分解してみて修理できるか試みました。
ブロアモーターの純正品番はMR315394。
デンソー製で、新品の値段は12000円をオーバーします。
社外品ならば3分の1の値段で購入できます。各自動車メーカー共通の製品のようです。
下記の品番はミツビシのモノですが、スズキ、ホンダ、ダイハツの軽自動車にも互換性のある製品が販売されているので、他社メーカーでも同一のブロアモーターが使われている可能性があります。
参考になれば幸いです。
ブロアモーター取り外し
運転席の下にもぐって、ヒーターユニット奥に取り付けられているブロアモーターを確認。
昼間の作業でも暗くて何も見えないので、ライトは必携です。
コードが邪魔なので、先にコネクタのロックを解除して取り外します。
ブロアモーターは、ビス3本でヒーターユニットにネジ止めされています。
ビス頭部は特殊な形状をしていますが、マイナスドライバーで外せます。
暗い上に狭い空間での作業なので、意外と手こずりました。
ビスを全て外しても、ブロアモーターの突起部分でヒーターユニットにロックされているのでビクともしません。
突起部分を手前に引きながら時計回りに回すとモーターごと手前に引き出せます。
ブロアモーターをAssy交換するならば新品に交換し、逆の手順で取り付けて終了です。
ブロアモーター分解
ここからは、取り外したブロアモーターを更に分解してオーバーホールを試みます。
取り外したブロアモーターは埃だらけで、見回してみてもネジ1つ見当たりません。
モーター本体にあるフタは、ツメでガッチリ固定されているので、ラジオペンチを使ってツメを曲げ、こじ開けました。
作業中、中からボロボロと粉の塊が出て来ていたのですが、正体は削れたブラシの粉塵でした。
モーターの中にはびっしりと粉塵がこびりついています。
とりあえず、エアダスターで各部品の粉塵を吹き飛ばして清掃しました。
コミュテータ―の、ブラシが接触している部分が酸化して黒く変色していました。
モーターが動かなくなったのは、コミュテータ―の酸化による接触不良だと思われます。
摩耗もかなり進行していましたが、使用可能と判断してサンドペーパーで軽く磨いておきました。
部品を取り外して分解していきます。
フィンはモーターの軸に挿し込まれているだけなのですが、最初は硬くて引き抜くことが出来ませんでした。フィンを壊さないように、根気よく加減しながら力をかけていくと、少しずつ抜けてきます。
ローターはスナップリングでハウジングに固定されているので、ピックツールで外しました。
当初、異音発生の原因と思っていた軸受け部分には、ベアリングが使用されていませんでした。
ブラシも半分以上が摩耗しているようでしたが、同一の部品は販売されていません。
ブラシを交換するなら代替品を探すことになります。
摩耗したブラシを外してノギスで計ってみると、幅のサイズは5.2mm×5.2mmでした。
当然、同じサイズのブラシなど見つかるはずも無いので、自作することになります。
カーボンブラシの自作と交換
長さはともかく、幅と高さの寸法がピッタリ合わなければ、ブラシホルダーに収めることが出来ません。
さらに、多くの交換用ブラシは導線が根元部分から出ているのに対し、元のブラシは導線が側面から出ているタイプであったため、代替部品が中々見つかりませんでした。
マキタの交換用ブラシに、側面から導線が出ているタイプで、少し大きめのモノがあったので、購入してサンドペーパーで同じサイズに加工しました。
実は1度失敗していて、ブラシを削りすぎてしまい、ホルダーに収めた時に、中でブラシがグラグラになっていました。
そのままモーターにセットして、ファンを回したのですが、ガリガリと大きな異音を立てながら回っていました。
再度、新品のブラシを購入し、正確に削り直して制作したブラシをモーターにセットして回してみると、「ウィーン」とモーター音が変わりました。
ブロアモーターのガリガリ異音の原因は、カーボンブラシのホルダー内での振動によるものだと分かりました。
故障直前に聞こえてきた異音は、消耗して短くなったブラシが、ホルダー内で振動していた音であると推測しました。
したがって、自作するカーボンブラシは、寸法を正確に製作する必要があります。
幅と高さは、目的の厚さの板2枚で挟み、サンドペーパーを平らな板に巻き付けて均等に削るように工夫しました。
手に持ったままで作業すると、正確に削ることが出来ないので形が崩れてしまいます。
ある程度削れたら、ホルダーに当てがいながら微調整していきます。
キツ過ぎてもダメ、緩すぎてもダメ。丁度すっぽり入るサイズに加工します。
加工前の状態から半分近く削ることになり、カーボンの粉が大量に出ます。
手はおろか作業場周辺も真っ黒になるので、それなりの養生をしておいたほうが良いです。
ブラシの取り付けは、元のブラシと交換するブラシの導線をそれぞれ適当な長さでカットし、はんだ付けました。
導線の長さをある程度確保しておかないと、ブラシホルダーに収められなくなります。
ブロアモーター組立・取り付け
ローターをブラシホルダーに取り付ける時、ホルダーにセットされたバネによってブラシが飛び出てしまうため、コミュテータ―と当たってしまい取り付けることが出来ません。
ブラシを引っ込めてハメたいのですが、新しいブラシは長すぎて扱いにくいので、ローターを先にブラシホルダーにセットしてからブラシを取り付けることにしました。
取り付け時には、バネが何度もビョ~ンと何処かへ飛んで行き、バネを探す羽目になりました。
ブロアモーター内にはベアリングが一切使われていませんでした。
自分の判断で、軸受けとローターの接触部分に薄くグリスを塗っておきました。
ローターを戻す時、ハウジング内の磁石に引き寄せられてくっつくため、中々軸受けまで挿入することが出来ませんでした。
ブロアモーターを元通りに組み立てます。
ブロアモーターをヒーターユニットに逆の手順で元通り組んでいけば終了です。
スイッチを入れると、無事にファンも回り、異音もしなかったので良しとしました。
ブロアモーターにはネジが1つもなく、分解することを想定して造られていないことは明白です。
次に壊れる原因はコミュテータの摩耗で、その時は代替部品は無いのでAssy交換になりそうです。
パーツが破損し、純正新品の購入が高額になるときは中古部品で賄うのも1つの方法です。
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消耗部品を交換するよりも、新品を購入したほうが効率的なのだと思いますが、取り敢えずブラシ交換だけで、どこまで持ちこたえられるかを見ていきたいと思います。