ステアリングラックブーツ交換
ステアリングラックブーツの破れ
ステアリングラックは、ステアリング機構の1つであるラック&ピニオン方式で採用されている、歯が切られたシャフトのことで、ステアリング操作を車輪に伝える大切な部品です。
ステアリングラックブーツは、このステアリングラックを保護するために取り付けられた蛇腹状のブーツで、車検を受ける時のチェック必須事項の1つです。
ステアリングラックブーツが破れていると車検には通りません。
ステアリングラックブーツは蛇腹状になっているので、縮まった状態では破れを発見しにくく、そのまま車検場で試験官に指摘されてしまうことも多いようです。
何より、放置しておくと、破れた個所から埃や水が浸入してしまい、中にある部品を傷つけてしまうため早急な修理が必要です。
ブーツは左右両方とも破れていて、走行距離24万キロでの初交換になりました。
下回りの点検で、機会があればラバー保護剤を吹きかけていたので、ブーツの寿命は延びたほうだと思います。
ラバー保護剤は、ブーツ、ベルト類のゴム製品には、かなりの効果があるのでお勧めです。
ステアリングラックブーツを交換するには、タイロッドエンドをナックルから切り離し、タイロッドからタイロッドエンドを取り外す必要があります。
この作業で1番厄介なことは、タイロッドエンドを取り外すとサイドスリップ調整が狂ってしまうことだと思います。
サイドスリップとは、ハンドルを真っ直ぐにした状態で、車が1メートル進んだ時の前輪の横方向へのズレのことで、車検では、プラスマイナス(つまり左右方向へ)5ミリ以内に収まらなければ不合格になります。
真っ直ぐ車が直進するように、タイロッドエンドのロッドへの取付位置を変えることによって、タイヤの角度を調整する作業のことをサイドスリップ調整と呼び、一般にトゥ角の調整のことを指します。
ホイールアライメントの1つで、車検場ではサイドスリップ試験として、車検の項目の1つになっています。
タイロッドエンドを取り外すということは、調整されたサイドスリップを無効にしてしまうことになり、これを元の調整された状態に戻すため、タイロッドエンドを取り付けてあった位置に再び付け直す必要があります。
タイロッドエンド取り外し
タイロッドエンドを外す前に、タイロッド、タイロッドエンドと回り止めナットとの繋ぎ目に目印をつけておきます。
目印のつけ方は人それぞれです。
要は、タイロッドエンドを元の取り付け位置に戻せればOKです。
目印の他に、ネジ山の数とネジの切ってある部分の長さを計っておきました。
いよいよ、作業に取り掛かります。
タイロッドエンドをナックルから外してからでは、タイロッドが動いてしまうため、タイロッドエンドをナックルから外す前に、タイロッドとタイロッドエンドを固定している回り止めナットを緩めます。緩めると言っても、ナットを画像奥へ動かすので、回す方向は時計回りになります。
このナットはモンキーレンチを使って緩めましたが、なめて破損させてしまうと厄介なので、専用工具を使った方が安全です。
ナットを緩めたら、タイロッドエンドをナックルから外します。
タイロッドエンドは、ナックルにがっちり固着していて素手では外すことが出来ないので、タイロッドエンドプーラーを使います。
タイロッドエンドをナックルから外したら、タイロッドエンドをタイロッドから取り外します。
タイロッドは、ラック接合部でユニバーサルジョイントで繋がっていて自由に回転するため、固定する必要があります。
タイロッドとタイロッドエンドの2か所にモンキーレンチをかけ、それぞれ逆方向に力をかけていきます。
気持ち的には、タイロッド側を固定して、タイロッドエンドを反時計回りに回して外していく感じでした。固着していれば、かなり大きな力をかけることになります。
この場所もロッド部をなめて破損させたくなかったので専用工具を使いたかったのですが、モンキーレンチで慎重に外しました。
タイロッドエンドを外したら、回り止めナットと奥にあるブーツを留めているクリップも取り外します。
ここまでの作業で、やっとタイロッドがフリーになりました。
古いブーツの取り外し
古いブーツを外しますが、車の下に潜り込んでの作業がやり易いです。
ブーツバンドが厚いのでニッパーでは切断できません。
バンドをカシメてある部分にマイナスドライバーを突っ込んで、無理矢理カシメ部を広げ、バンドごとブーツをロッド側に移動させて抜きます。
奥に見える、タイロッドのユニバーサルジョイント部のグリスは変色していて、グリスをふき取ってから金属部分を見ると、うっすらと錆が見えました。
ブーツが破れていなくても、年月が経っていれば交換したほうが良いと思います。
グリスアップとブーツ取り付け
ユニバーサルジョイントの古いグリスを丁寧に拭き取り、可動部に問題が無いことを確認して、新しいグリスを塗ります。
拭き取ったグリスの色から、塗ったグリスはリチウムグリスにしました。
また、奥にあるステアリングラックに塗ってあったグリスも、その色からモリブデングリスと判断して、古いグリスをふき取り、新しくモリブデングリスを塗っておきました。
モリブデングリスは耐熱性・耐荷重性に優れたグリスで、ステアリングラックに使用されていても不思議ではないと考えました。
塗ったグリスの種類の正しい判断が出来ているかどうか分かりませんが、ユニバーサルジョイント部とラック部のグリスは、明らかに種類の異なるものでした。
取り付ける部品は純正品にしました。バンドとクリップは、ブーツとは別売りになっています。
純正品番 MR418329 ベローズ ステアリング。
純正品番 MB844982 バンド ステアリング(運転席側)、純正品番 MR234226 バンド ステアリング(助手席側)。
純正品番 MS660165 クリップ カバー。
左右に取り付けるブーツは同じものなのに、バンドが運転席側と助手席側で品番が異なります。バンドの径の大きさも異なっています。
クリップは再利用できそうですが、気分的な問題で新品に交換しました。
社外品を使うならブーツのみで、バンドとクリップは純正品を使うことになります。
大野ゴム/OHNO ステアリングラックブーツ RP-2107
ラックブーツに、あらかじめバンドをセットしておいてから、取り付け作業を行います。
ブーツのバンドとクリップの取り付け箇所には、内側と外側に薄くシリコングリスを塗っておきました。
細長いタイロッドに通していくので、グリスを塗っておいた方がスムーズに挿入できると思います。
思いがけず手こずったのが、ブーツのラック部への取り付け作業でした。
ラック部の口の方が一回り大きくなっていて、なかなか嵌らなかったので、ハンドルを切ってブーツを縮めると、少しは作業しやすくなりました。
バンドのカシメはプライヤーで挟み込みました。専用工具が無いと、元の通り綺麗にカシメる事は出来ません。
ブーツにクリップを嵌めてブーツ取り付け作業は終了です。
最後に、この作業で1番大切なタイロッドエンドの取り付けです。
タイロッドエンドを、取り外す前に数えておいたネジ山の位置まで回していき、付けておいた目印を頼りに取り付けてあった元の位置に来るように締めていきます。
回り止めナットの締め付けは、タイロッドエンドをナックルに仮止めしてから行えば楽に締め付けられます。
実は、作業している間に、マジックで付けておいた目印が薄くなっていて、すごく焦りました。
少々のことでは消えないマーキング方法の方が良いと思います。
取り付けたタイロッドエンドをナックルに固定して交換作業は完了です。
取り付けの詳細は、タイロッドエンドブーツ交換を参照。
タイロッドエンドを完全に元に位置に取り付けたとしても、タイロッドエンドとナックル部分の結合部でサイドスリップが狂ってしまう可能性もあります。
その時は、自分の力量ではどうしようもないので、検査工場まで持ち込んで調整してもらうことにしていました。
ブーツ交換後に試乗してみて、明らかにサイドスリップ調整が狂っていると感じることは無かったので良しとしました。
車検場のサイドスリップ試験で不合格だった場合でも、近くのテスター屋で調整してもらえば良いと考えていましたが、何の問題もなく合格することが出来ました。