ドラムブレーキ組立
各部品の洗浄
ドラムブレーキ分解作業から組立と調整作業に取り掛かります。
外した部品をパーツクリーナーで洗浄し、損傷をチェックしておきます。
ブレーキシュー以外の部品点数は以下の10点です。
- アッパーブレーキシューリターンスプリング
- ロアーブレーキシューリターンスプリング
- ブレーキレバースプリング
- ブレーキアジャスターの構成部品3点
- シューセットスプリング×2
- シューセットピン×2
パーツクリーナーで洗浄したバックプレートにグリスを塗ります。
グリスを塗る箇所は11ヶ所です。
- ブレーキシューとバックプレートとの摺動部分6ヶ所
- ホイールシリンダーピストンとブレーキシューとの接触部分2ヶ所
- バックプレートアンカー部とブレーキシューとの接触部分2ヶ所
- パーキングブレーキケーブルとバックプレートとの接触部分1ヶ所
この他にも、シューセットピンやスプリングの取り付け部などの部品同士が擦れる箇所にもグリスを塗って摩耗を防ぎます。
また、個人的な経験から行っている作業ですが、ホイールシリンダーや未塗装部分にも薄くグリスを塗って保護膜を作り、サビを防止しています。
パーツクリーナーで洗浄したまま放置すると、次の車検でドラムを開けた時は、ホイールシリンダーは多分サビています。
ここでの作業で使用するグリスですが、ゴムを侵しにくいドラムブレーキ専用のモリブデンラバーグリスを使用するのが良いと思います。
シリコングリスよりも粘性が強く、水に濡れても流れ落ちにくくなっていて、ブレーキのオーバーホールだけでなく、ブーツなどのゴム類の交換には必携です。
ブレーキシュー取り付け
トレーリングシュー(正確に言うと、トレーリングシューにセットされているパーキングレバー)をパーキングブレーキケーブルに取り付けます。
摺動部にグリスを塗り、ケーブルのスプリングを押し上げて、ケーブルをパーキングレバーに嵌め込みます。
バックプレート裏側からシューセットピンを挿し込みます。
シューセットピンも、バックプレートとの摺動部にグリスを塗り、水の侵入を防ぎます。
トレーリングシューをセットして、その上からシューセットスプリングを取り付けます。
シューセットピンの頭は摺動部なので、薄くグリスを塗っておきます。
シューセットピンの頭をプライヤーで軽く掴み、押し込みながら90°回転させると、トレーリングシューが固定されます。
固定と言っても、ブレーキシューはある程度自由に動くことができるようになっています。
プライヤーでは押し込んで回転させる作業が難しいことと、シューセットピンとスプリングを傷めてしまうので、傷つけたくなければ専用工具を使います。
反対側のブレーキシューも同様の方法で取り付けます。
ロアーリターンスプリング取り付け
ロアーブレーキシューリターンスプリングの取り付けは、取り外し時よりも面倒でした。
スプリングが硬い上に、取り付け位置も難しい場所にあるため、ピックツールでの取り付けを断念しました。
先にスプリングを両方のブレーキシューに取り付けておき、片方のブレーキシューをアンカー部に取り付けます。
反対側のブレーキシューも下端を掴んで引っ張り、スプリングごと開いて取り付けます。
この方が楽にアンカー部に取り付け出来ます。
ブレーキシューがアンカー部にしっかり取り付けられているか確認しておきます。
ブレーキアジャスター組付け
ブレーキアジャスターは、後述するドラムブレーキ調整で必要な部品です。
3つのパーツで構成されていて、それぞれの正確な部品名称が分からないので便宜上、次のように呼ぶことにします。
カムの付いたボルト状の部品を「アジャスタースクリュー」。
ブレーキシューを押さえつける2つの部品のうち、アジャスタースクリューを嵌めるネジが切られている方を「スクリューソケット」、ネジか切られてない嵌め込むだけの方を「スクリューボタン」と呼ぶことにします。
アジャスタースクリューに薄くグリスを塗り、スクリューソケットにネジ締めします。
最後まで締めきっても構いませんが、外した時より少し多めに締めておけば大丈夫です。
右ドラムブレーキのブレーキアジャスターは、逆ネジになっています。
アジャスタースクリューのもう一方にはスクリューボタンを取り付けます。
こちら側はネジが切っていないので、グリスを薄く塗って、そのまま挿し込むだけです。
スクリューソケットとスクリューボタンのブレーキシューを挟み込む部分に薄くグリスを塗っておきます。
ブレーキシューをホイールシリンダーのピストンにしっかり嵌め込み、同時にブレーキアジャスターも取り付け箇所に隙間が生じないように嵌め込みます。
アッパーリターンスプリングとパーキングレバースプリング取り付け
ホイールシリンダー部分とアジャスター部分の取り付け箇所が外れないよいうに注意しながら、アッパーブレーキシューリターンスプリングを取り付けます。
外す時同様、取付時にもピックツールを使います。
パーキングレバースプリングを取り付けて組立て作業は完了です。
通常、取り外した時の逆の手順に組立てていくものですが、ロアーブレーキシューリターンスプリングの取り付けで手こずってしまったため、順番がデタラメになってしまいました。
次にブレーキを分解するときは、今回の組付けの逆で外そうと思います。
アジャスターレバーがカムに掛かっているか確認します。
ここは何もしなくても自然に掛かるようになっていましたが、前の車は外れ易くなっていました。
ドラムの取り付け前に、もう1度各部品の取り付け状態をチェックしておきます。
ドラム取り付け
ドラムを元通りに取り付けます。
ハブボルトを締め付ける前に、ワッシャーがあるので忘れずに入れておきます。
ハブナットの締め付けトルクは59N・mです。
この値よりも小さいと走行中にドラムが外れる可能性があり、大きいとハブベアリングを破損させる可能性があります。
ハブナットを規定トルクで締め付けた後、30°以内で増し締めして割ピンの穴に合わせます。
割ピンの穴の位置が余りにも離れていればワッシャーを裏返して再度試してみます。
ハブナットを締め付けた後は、割ピンを挿し込んで外れないように先端を曲げておきます。
最初に外したキャップの取り付けは、TS30の塩ビパイプを当てて打ち込めばキャップを破損させることはありません。
ドラムブレーキを組立てたら、次にブレーキフルードのエア抜き作業とドラムブレーキ調整を行います。
詳細はブレーキフルード交換とドラムブレーキ調整を参照。